合鏡
人は鏡を前にするとき、実像と虚像の差異をあえて意識しないが、鏡になんらかの異変が生じたときに、あらためてそれが虚像であると実感し、また、実像と虚像の狭間で、存在の本質について思いを馳せるのではないだろうか。
Opposing Mirror(合わせ鏡)とき名付けられたこのサウンドシステムは、階段踊り場に仕掛けられたマイクによって集音されたリアルタイムのサウンドスケープ音が時間差を経て201号室に集約され、それらがあたかも合わせ鏡によって生成される虚像の音の合わせ鏡となって立ち現れる。来場者は自ら発した音と201号室で、再び再会することになる。
あたかも無限に立ち現れるその実像⇄虚像の音は、実は我々の存在や時間が多元的であるのかもしれないことを示唆している。