五水響
五水響

アートラインウィーク2007にて、東急多摩川駅に多摩川とその周辺の文化やとりまく自然を模写した、音によるミステリーサークルを再現したのに引き続き、第二回にあたるアートラインウィーク2008では、大田区庁舎の正面ロビーに、多摩川の水干を「音のみ」で再現した。多摩川の水干は長い歳月を経てうがたれた自然にできた水琴窟のようでもあり、地表に蓄えられた後に水干で産み出される一滴の水が溢れ出し、せせらぎがやがて大河となり、海にまで達する様を、音による作品として壮大なスケールで演出する作品。大田区庁舎に訪れる来訪者数に呼応して、笠取山にある多摩川の水源でサンプリングされた水滴の音が、エントランスホールに反響する。水音は人の象徴でもあり、滴り続けて溜まることによって次第に音による波紋を広げ、人が多くなれば多くなるほど、豊かにその波紋の音が広がってゆく。またその架空の水干の周囲では、笠取山の頂上付近で聞かれる自然音や、移り変わる陽の運行が音楽的に表現され、豊かな音風景をつくりだす。